2025年5月期決算短信〔日本基準〕(連結)
## サマリ ### 3行でわかる!今回のIR * 売上は**1,000億円の大台を突破**し、利益も大幅増で好調を維持しました。 * 主力の**リテール事業**に加え、**地域マーケティング事業**が大きく成長を牽引しています。 * 新中期経営計画を発表し、**配当性向30%目標**を掲げ、株主還元への意欲を示しました。 ### 注目ポイント * **「モノを売る」小売から「モノ×サービス」の生活サービス領域への拡大**を着実に推進しており、**EZOCA**を軸とした地域経済圏の構築が進行中です。 * **物価高騰や競争激化**という厳しい市場環境ながら、既存店舗の強化(ESLP、アプリ活用)と**調剤併設店舗**・**生鮮食品導入**による収益力強化が進んでいます。 * 営業活動によるキャッシュフローは減少したものの、**投資・財務活動による資金流出が抑制**され、財務基盤は安定しています。 ### 率直な評価 * **良い点**: 厳しい市場環境下で増収増益を達成し、既存事業の強化と新規事業(地域マーケティング)の成長が両輪で進んでいる点は評価できます。自己資本比率も改善し、財務の健全性も向上しています。 * **課題点**: 営業活動によるキャッシュフローが前年より減少している点は注意が必要です。また、新中期経営計画の目標達成に向けては、引き続き**物価上昇**や**人件費増**といったコスト要因への対応がカギとなります。 --- ## 詳細解説 ### **業績のホンネ** サツドラホールディングスの2025年5月期は、まさに「攻め」の決算だったと言えるでしょう。**売上高は1,001億74百万円**を達成し、ついに**1,000億円の大台を突破**しました。前年同期比で**4.9%の増収**です。ぶっちゃけ、物価上昇や実質賃金減少で消費者の節約志向が強まる中、この増収は立派です。 利益面も絶好調で、**営業利益は16億75百万円(前年比21.0%増)**、**経常利益は16億48百万円(同23.4%増)**と大きく伸びました。最終的な**親会社株主に帰属する当期純利益も7億67百万円**と、前年比で**63.1%増**と大幅な増益を叩き出しています。これは、商品単価の上昇やビューティケア部門の伸長、そして何より**店舗の効率的な運営**と、**EZOCA**を核とした**地域マーケティング事業**の成長が背景にあります。売上高営業利益率は1.7%と、昨年から0.3ポイント改善しています。 業界全体は、出店競争やM&Aによる寡占化が進む厳しい環境ですが、サツドラは北海道に根差した**地域密着型**の戦略で、着実に売上と利益を伸ばしていることが数字から見て取れます。特に**インバウンドフォーマット店舗**の好調も、売上を押し上げた要因の一つですね。 ### **事業の核心** サツドラの事業の核心は、単なるドラッグストアにとどまらない「**地域の生活総合グループへの進化**」にあります。これまでの強みである**リテール事業**は、**調剤併設店舗の拡大**や、今期新たに46店舗に導入した**生鮮食品の取り扱い**など、顧客の生活ニーズに応えることで収益基盤を強化しています。**「ESLP(Everyday Same Low Price)」**という価格戦略と、累計100万ダウンロードを突破した**サツドラ公式アプリ**の活用で、顧客の来店頻度向上と接点拡大に繋げている点が素晴らしいです。 そして、同社のもう一つの柱が**地域プラットフォーム事業**です。北海道共通ポイントカード**「EZOCA」の会員数は230万人を突破**し、提携店も300社、1,100店舗にまで拡大。自治体と連携したポイントカード**「とうべつEZOCA」**や地域交通サービス**「KOSHIMOタクシー」**へのEZOCAプラットフォーム活用など、地域に根差したサービス展開が非常にユニークで、これからの成長ドライバーになるでしょう。マーケティング事業の売上高が**前年比24.8%増**と大きく伸びていることからも、この戦略が奏功していることが分かります。 一方で、連結子会社であったRxR Innovation Initiative株式会社と株式会社シーラクンスを連結から外すなど、事業ポートフォリオの見直しも着々と進めています。これは、より**事業の選択と集中**を進め、効率化を図る動きと見られます。 ### **お金の流れ** キャッシュフローの健全性も見ていきましょう。**営業活動によるキャッシュフロー**は、前年の35億42百万円から25億98百万円に減少しました。これは、売掛金や未収入金の増加が要因として挙げられますが、本業でしっかりと資金を生み出していることに変わりはありません。 **投資活動によるキャッシュフロー**は、前年の19億21百万円の支出から16億69百万円の支出へと、流出額が抑制されました。主に**有形固定資産(店舗の改装や新規出店)**や**無形固定資産(システム投資など)**への投資が中心ですが、昨年よりも投資額が減ったのは良い傾向です。 **財務活動によるキャッシュフロー**も、前年の12億61百万円の支出から9億35百万円の支出へと、流出額が減少しています。これは、**長期借入れによる収入が54億円**あった一方で、**短期借入金の減少**や**長期借入金の返済**、そして**配当金の支払い**があったためです。現金及び現金同等物の期末残高は26億69百万円と、ほぼ横ばいで安定しています。 財政状態では、総資産が461億94百万円に増加し、自己資本比率も21.2%(前年20.3%)に改善しています。これは、**当期純利益の積み上がり**による純資産の増加が大きく貢献しており、**財務基盤がさらに強固になっている**ことを示しています。 ### **今後の見通し** 会社は2026年5月期の連結業績として、**売上高1,020億円(前年比1.8%増)**、**営業利益18億円(同7.5%増)**、**経常利益17億円(同3.1%増)**、**親会社株主に帰属する当期純利益8億円(同4.2%増)**を見込んでいます。売上成長は鈍化するものの、利益は堅実に伸ばしていく計画ですね。 この見通しの背景には、新たに策定された**新中期経営計画(2026年5月期~2028年5月期)**があります。「**地域で稼ぐ『体制』づくり**」をテーマに掲げ、**荒利率の改善**、**販管費の抑制**、**資本効率の改善**、そして**株主還元**の強化を重点目標としています。特に、**配当方針を累進配当に転換**し、年間1株あたり**10円を下限**としつつ、**連結配当性向30%を目標**とするのは、株主への還元意欲の表れであり、投資家としては注目のポイントです。 ただし、経済環境は依然として**物価上昇や人件費増**など不透明な要素も多く、計画通りの達成にはコストコントロールが引き続き重要になるでしょう。しかし、これまでの**地域密着戦略**と**DX推進**、そして**新規事業の育成**を通じて、サツドラがどのような成長を見せるのか、今後の動向から目が離せません。**投資判断のポイント**としては、新中期経営計画の進捗と、EZOCA経済圏のさらなる拡大が期待できるかに注目すると良いでしょう。